情報機器(VDT)作業における職場での予防・対策

情報機器(VDT)作業における職場での予防・対策

パソコン等の情報機器を使用して行う作業における労働衛生管理については、平成14年に作成された「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」により、関係事業場に対して指導が行われてきました。 

しかし、その後、技術革新により情報機器はここ数年で目まぐるしい変化をとげ、職場におけるIT化はますます進行し、情報機器を使っての作業は仕事をする上で欠かせないものとなり、労働者の範囲や作業形態はより広く多様化しています。

そのような状況を踏まえ、厚生労働省は令和元年(2019年)7月、新たに「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」がまとめられました。

このガイドラインは、パソコンなど、情報機器を使って作業を行う労働者の健康を守るためのものです。

情報機器作業による労働者の心身の負担を軽くし、支障なく働けるようにするため、事業者が講ずべき措置をまとめています。

管理者がご自身である個人事業者としても、情報機器作業に伴う健康障害を予防し、対処するために普段の情報機器との向き合い方について見直してみましょう。

VDT作業とは?

「VDT」とは、Visual Display Terminalsの略で、画面表示をする端末装置(パソコンやスマートフォン、タブレットなど)を用いた作業のこと

情報機器(VDT)を使用した作業を長時間続けたことにより、眼や身体、心に生じる症状を「VDT症候群」といい、企業としては対策が必要です。

時間だけでなく、作業の性質によっても症状が生じやすくなります。

➀視覚負担は、近い距離で画面を長時間見たり、瞬きの回数が減ること、➁首・肩・手の負担は、同じ姿勢で繰り返し同じ作業すること、➂精神的な負担は、正確さやスピードが求められるようなプレッシャーがかかったり、余裕がないことによる職場での会話減少などが原因となります。

主に、これら3つの負担により以下の症状が生じやすくなります。また、この3つの負担による症状は関連性が深く、1つの症状が他の症状をまねいたり、悪化させてたりすることが多くなっています。

  1. 視覚負担
    眼の乾き、眼の痛み、ぼやけ、頭痛など、眼精疲労(目の病的な疲労)
  2. 筋骨格系負担
    頚や肩のこり、背中のだるさ、肩から腕の痛み、腰痛、足や腰のだるさなど、慢性的になると背中の痛み、手指のしびれなどに進展
  3. 精神神経負担
    めまい、だるさ、食欲不振、過食、イライラ感、不安感、抑うつ状態、過労
視覚負担:眼の乾き-眼の痛み-ぼやけ-頭痛-眼精疲労、筋骨格系負担:頚や肩のこり-背中のだるさ-肩から腕の痛み-足や腰のだるさ-慢性的になると背中の痛み-手指のしびれ、精神神経負担: 腰痛-めまい-だるさ-食欲不振-過食-イライラ感-不安感-抑うつ状態-過労
図1:VDT症候群の症状

視覚機能への影響はディスプレイを長時間見続けていることや、その最中に浴びているブルーライトが原因とされています。

また、筋骨格系への影響は長時間同じ姿勢のまま作業を続けていることや、キーボード入力、マウスのクリックといった作業を繰り返し行っていることが原因とされています。尚、眼疲労や腱鞘炎については、労災認定されるケースもあるので注意が必要です(上肢障害の労災認定:厚生労働省)。

そして、精神に与える影響としては、長時間にわたる作業によって知らず知らずのうちにストレスが溜まることが原因で症状が起こるとされています。

情報機器(VDT)を使用した作業における疲労の最大原因は、ディスプレイ作業における画面の注視といわれており、症状が長く続き、日常生活にも支障をきたしている場合は医療機関を受診すること、情報機器との付き合い方を考えることが必要です。

「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」

令和元年に、情報機器作業(VDT作業)の健康被害を抑えるため「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が改定されました。

平成14年のガイドラインにあった細かな作業区分が無くなり、特定の業務を4時間以上おこなう作業と、それ以外の作業の2区分となり分かりやすくなりました。 在宅勤務が一般的となり、事務所以外での作業についても言及されています。

対象となる情報機器

対象となる作業は、デスクトップ型パソコン・ノート型パソコン・タブレット・スマートフォン等の情報機器を用いた事務所作業になります。

また、情報機器の使用者は、一般正社員、パートタイマー、派遣労働者、臨時職員等の就業形態の区別なく、作業者が情報機器を使用する場合は全て情報機器ガイドラインの対象です。

「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の対象となる情報機器
図2:「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の対象となる情報機器

情報機器作業の作業区分(対象となる作業)

本ガイドラインでは従前のガイドラインとは異なり、細かい分類をせずに、特定の業務を4時間以上行う作業と、それ以外の作業の2区分となり分かりやすくなりました(表1)。

それぞれに応じた労働衛生管理の対策を検討するに当たり、以下の点と表を原則的な考え方として進めます。

  • 情報機器作業の健康影響が作業時間と拘束性に強く依存することを踏まえる
  • 実際の作業を行う労働者の個々の作業内容、使用する情報機器、作業場所等に応じて必要な対策を拾い出し進める

「拘束性」について

情報機器作業における身体的な特徴は「拘束性」という言葉で表される。これは情報機器作業においては、画面からの情報を正確に得るために頭(眼)の位置が限定されること、さらに、特にキーボードからの入力においては、手の位置も限定されることから、身体の動きが極端に制限されることによる。
また、決められた時間内に処理すべき作業量が多い場合などには精神的な負荷も加わり、心身ともに「拘束性」が強くなる。

情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説(厚生労働省)
表1:情報機器作業の作業区分
作業区分作業区分の定義作業の例
➀作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの(全ての者が健診対象)1日に4時間以上情報機器作業を行う者であって、次のいずれかに該当するもの
・作業中は常時ディスプレイを注視する、又は入力装置を操作する必要がある
・作業中、労働者の裁量で適宜休憩を取ることや作業姿勢を変更することが困難である
・コールセンターで相談対応(その対応録をパソコンに入力)
・モニターによる監視・点検・保守
・パソコンを用いた校正・編集
・デザイン
・プログラミング
・CAD作業
・伝票処理
・テープ起こし
・データ入力
➁上記以外のもの(自覚症状を訴える者のみ健診対象)上記以外の情報機器作業対象者・上記の作業で4時間未満のもの
・上記の作業で4時間以上ではあるが労働者の裁量による休憩をとることができるもの
・下記作業で4時間以上のものを含む
文書作成作業、経営等の企画・立案を行う業務、会議や講演の資料作成を行う業務、経理業務、庶務業務、情報機器を使用した研究

また、業務におけるVDT作業を、作業の性格により分類すると表2となります。

表2:作業の性格による分類
作業の性格作業
自分の判断で中断が難しい作業・モニターによる監視作業
・コールセンターでの相談対応
情報機器を常時使う作業・パソコンを用いた校正・編集・デザイン
・プログラミング
考えながら行う作業・企画・立案のための文書作成
・経理業務、庶務業務

ガイドラインの枠組み

「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」は、前述した通り1日に4時間以上パソコンなどを使用する労働者を対象にしており、オフィスワーカーが働く時に注意すべき事項が記されています。

そして、情報機器作業をする働く人たちの健康管理のために、個人はもちろん、会社はこれをもとに情報機器作業に従事する人の健康管理を行うことが望ましいとされています。

会社が実施できる対策としてガイドラインに記載されている、①作業環境管理、②作業管理健康管理、安全衛生教育の4つについて確認しておきましょう。

➀作業環境管理

情報機器作業を行う環境の整備方法について説明しています(表3)。

作業者の心身の負担を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、次により情報機器作業に適した環境を整えましょう。

表3:作業環境管理の概略
作業環境管理項目管理基準
照明および採光【照明、採光】
・ディスプレイ画面上の照度を500ルクス以下に設定する
・書類上やキーボード上の照度を300 クス以上に保つ
・画面、書類、キーボード面の明るさと、周辺との明るさの差を少なくする
・画面に照明器具や窓などが映りこまないようにする

【グレア対策】
・照明が明るすぎる場合はカバーをとりつけてまぶしさをおさえる
・グレアを低減するための間接照明を用いる
・太陽光や照明の光が作業画面に反射しないよう、ディスプレイの位置・傾きを調整する
・グレア対策が施されているディスプレイや、反射を防ぐフィルムなどを使用する
 ※グレア:太陽光や照明などによる、物が見えづらいような不快なまぶしさのこと
情報機器等以下の➀~➅等の情報機器を事業場に導入する際には、作業者への健康影響を考慮し、作業者が行う作業に最も適した機器を選択し導入すること。
➀デスクトップ型機器、➁ノート型機器、➂タブレット・スマートフォン等、➃ソフトウェア、➄椅子、➅机または作業台
騒音の低減措置情報機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には、騒音の低減措置を講じること。
(例)遮音及び吸音の機能を有するつい立てで取り囲む、機器そのものを消音ボックスに収納する、床にカーペットを敷く、低騒音型機器を使用するなど
その他換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所衛生基準規則に定める措置等を講じること。

情報機器のディスプレイは、輝度やコントラストの調節は眼の保護、位置や向きの調整は正しい姿勢につながります(図3)。

肩こりや疲労を予防するために、入力機器を動かせるキーボードやマウスを利用したり、タブレット・スマートフォン等で長時間作業をおこなう際には、キーボードなど外付け機器を利用することも重要です。

また、机・作業台は、「安定して座れ、移動しやすいものを」「座面の高さや背もたれが調節できる」「机や作業台は、機器と書類を置ける広さを」「机の高さは作業者に合ったものを」「机の下は脚が動かせるような広さを」考えて、作業の目的にあった情報機器、椅子、机を使用しましょう。

高さ調整ができない机又は作業台を使用する場合は、床からの高さはおおむね65cm~70cm 程度(高さ調整ができる机又は作業台を使用する場合の高さは60cm~72cm 程度)のものを用いることが望ましい。

※65cm及び70cmがそれぞれ女性及び男性が使用する場合に必要な高さのほぼ平均値となるため

職場でのパソコン作業(VDT作業)に適した姿勢とオフィス環境
図3:職場におけるパソコン作業(VDT作業)に適した姿勢とオフィス環境

➁作業管理

情報機器作業の方法(一日の作業時間、休憩の取り方、望ましい姿勢)について説明しています(表4)。

作業者が、心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、作業の特性や個々の作業者の特性に合った適切な作業管理をおこないましょう。また、事業者は作業者に応じた業務量にすることも重要です。

作業姿勢は、作業環境管理で示した図3も併せて確認しましょう。

表4:作業管理の概略
作業管理項目管理基準
作業時間・連続作業時間は1回につき1時間を超えないようにする
・連続作業と連続作業の間に10~15分間の休止時間を設ける
・連続作業の時間内にも1~2回の小休止を設ける
・テレワークにおいては、20分毎に20秒間小休止を取り20フィート(約6m)先を見るという「20-20-20 ルール」が、眼精疲労を防ぐための簡単に自宅でも実践できる方法として推奨されている
作業姿勢・画面と眼の距離は40cm以上離す
画面の上端が眼の高さとほぼ同じか少し下になるようにして、ディスプレイの配置、デスク、椅子の高さを調節する
・ディスプレイに表示する文字の大きさは、小さすぎないように配慮(文字高さがおおむね3mm以上とするのが望ましい)
・座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましい
・傾きを調整できる背もたれに背を充分に当てて椅子と大腿部膝側側面の間に手指が入るほどのゆとりを設け、大腿部に無理な圧力が加わらないように、椅子に深く腰掛ける
肘の角度は90度以上にして、腕を肘掛けに置いたり、マウス操作の際は手首を固定するための台などを使用する
足元のスペースを確保して、足の裏全体が床に接するように、必要に応じて充分な広さで滑りにくい足台を用意する

作業環境の維持管理

作業環境を常に良好な状態に維持し、情報機器作業に適した情報機器等の状況を確保するため、以下の点検及び清掃を行い、必要に応じ、改善措置をおこなっていきます。

  1. 日常の点検:作業者には、日常の業務の一環として、作業開始前又は一日の適当な時間帯に、採光、グレアの防止、換気、静電気除去等について点検させるほか、ディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の点検を行わせること。
  2. 定期点検:照明及び採光、グレアの防止、騒音の低減、換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去等の措置状況及びディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の調整状況について定期に点検すること。
  3. 清掃:日常及び定期に作業場所、情報機器等の清掃を行わせ、常に適正な状態に保持すること。

➂健康管理

作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業者に対する健康管理をおこない、情報機器による健康障害を予防しましょう。

ここでは、情報機器作業者の健康を守るための措置(健康診断、健康相談、職場体操等)について説明しています。

健康診断

新たに情報機器作業を行うこととなった作業者(再配置の者を含む。以下同じ。)の配置前の健康状態および情報機器作業を行う作業者の配置後の健康状態を定期的に把握し、健康管理を適正に進めましょう(表5)。

表5:情報機器作業をおこなう作業者に関する健康診断の概略
健康診断の種類配置前健康診断定期健康診断
実施時期配置前に実施(一般健康診断と併せて実施可能)1年以内ごとに1回定期に実施(一般健康診断と併せて実施可能)
検査項目○業務歴の調査
○既往歴の調査
○自覚症状の有無の調査
○眼科学的検査
 ・遠見・近見視力の検査
 ・屈折検査
 ・調節機能検査(自覚症状ある者のみ)
 ・眼位検査(自覚症状ある者のみ)
○筋骨格系に関する検査:上肢の運動機能、圧痛点等の検査、その他医師が必要と認める検査
○業務歴の調査
○既往歴の調査
○自覚症状の有無の調査
○眼科学的検査
 ・遠見・近見視力の検査
 ・調節機能検査(40歳以上の者が対象)
 ・眼位検査(40歳以上の者が対象)
○筋骨格系に関する検査:上肢の運動機能、圧痛点等の検査、その他医師が必要と認める検査
対象者前述の「情報機器作業の作業区分」における➀は全ての者➁は自覚症状を訴える者
事後措置配置前又は定期の健康診断によって早期に発見した健康阻害要因を詳細に分析し、有所見者に対して次に掲げる保健指導等の適切な措置を講じるとともに、予防対策の確立を図ること。

健康相談

作業者が気軽に健康について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、プライバシー保護への配慮を行いつつ、メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の方法等についての健康相談の機会を設けるよう努めましょう。
また、パートタイマー等を含む全ての作業者が相談しやすい環境を整備する等特別の配慮を行うことが望ましい。

職場体操等

静的筋緊張や長時間の拘束姿勢、上肢の反復作業などに伴う疲労やストレスの解消には、アクティブ・レストとしての体操やストレッチを適切に行うことが重要です。そのため、就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行うことが望ましい。

具体的な予防・対策の方法は後述しています。

➃労働衛生教育

情報機器作業者および管理者に対して、上記の対策の目的や方法について、作業者や管理者に理解してもらうための教育について説明しています。

作業者向け教育内容

  • 情報機器ガイドラインの概要について説明
  • 作業管理:作業計画・方法、作業姿勢、ストレッチ・体操など
  • 作業環境管理:情報機器の種類・特徴・注意点、作業環境が及ぼす影響など
  • 健康管理:情報機器作業の健康への影響(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘルスなど)

管理者向け教育内容

  • 情報機器ガイドラインの概要(労働災害統計を含む。)について説明
  • 作業管理:作業計画・方法、作業姿勢、ストレッチ・体操など
    ※管理者として労働者の作業方法や姿勢等を客観的に観察し、指導できるようにする。
  • 作業環境管理:情報機器の種類・特徴・注意点、作業環境(作業空間、ワークステーション、什器、採光・照明、空調など)
    ※管理者として作業環境の改善、維持ができるようにする。
  • 健康管理:情報機器作業の健康への影響(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘルスなど)、健康相談・健康診断(受け方)、事後措置
    ※管理者として労働者に適切な助言(衛生管理者や産業医などへの導きなど)ができるようにする。

講師は、情報機器作業に係る労働衛生管理に知識と経験を有する者や情報機器作業教育指導員講習の修了者としてください。

注)「情報機器作業に係る労働衛生教育の推進について」(昭和61年3月31日付け基発第187号)

配慮事項

「高年齢労働者」に対する配慮事項等

高年齢の作業者については、室内の明暗の対照、ディスプレイの明るさ、グレア防止のほか、ディスプレイに表示する文字の大きさ等を作業者ごとに見やすいように設定するとともに、過度の負担にならないように作業時間や作業密度に対して配慮しましょう。

また、作業の習熟の速度が遅い作業者については、それに合わせて追加の教育、訓練を実施する等により、配慮を行うことが望ましい。

「障害をもつ作業者」に対する配慮事項等

事業者は、作業者の特性に応じた機器の導入も検討する必要があります。

情報機器作業の入力装置であるキーボードとマウスなどが使用しにくい障害等を有する者には、必要な音声入力装置等を使用できるようにするなどの必要な対策をおこないましょう。
また、適切な視力矯正によってもディスプレイを読み取ることが困難な者には、拡大ディスプレイ、弱視者用ディスプレイ等を使用できるようにするなどの必要な対策をおこないましょう。

「テレワークをおこなう労働者」に対する配慮事項等

テレワークをおこなう労働省においても、事業者はこのガイドラインに準じて作業者の健康確保に努めましょう。

労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働安全衛生法等の労働基準関係法令が適用されるため、作業者が自宅でのテレワークにおいて、このガイドラインを参考にして、自ら望ましい作業環境の確保ができるように助言等を行うことが望ましい。

(注) 4時間以上の作業

パソコン作業者の調査研究から、1日の作業時間が4~5時間を超えると中枢神経系の疲れを訴える作業者が増大し、また、筋骨格系の疲労が蓄積するという調査報告がある。また、疲労測定に関する別の調査研究からは、点滅光の識別度合いを示すフリッカー値が5%以上の低下を示して疲労を示す対象者が作業者の 25%を超えないことを目標とすると、1日の作業時間は 300 分が望ましいとされている。

テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン

厚生労働省は令和3年に、情報機器ガイドラインのほか急増しているテレワークなど在宅での働きかたに対して、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を定めています。

自宅等においてテレワークを実施する場合においても、事業者は労働安全衛生法等の関係法令等に基づき、労働者の安全と健康の確保のため措置を講ずる必要があります。そのため、自宅でもオフィスと同じレベルの作業環境になるように従業員に指導を行うようにしましょう(図4)。

テレワークを行う際の作業環境のポイント
  • 部屋:作業を行うのに十分な空間を確保する。転倒しないように整理整頓する。
  • 窓:空気の入れ替えを行う。ディスプレイに太陽光が入射する場合は、窓にカーテンを設ける。
  • 机・椅子・PC:目・肩・腰に負担がかからないように、机・椅子やディスプレイ・キーボード・マウスなどを適切に配置し、無理のない姿勢で行う。
  • 照明:作業に支障がない十分な明るさにする。
  • 室内・湿度:冷房・暖房・通風などを利用して、作業に適した温度・湿度となるように調整する。
図4:自宅等でテレワークを行う際の作業環境の整備について

情報機器作業(VDT作業)に伴う身体的不調を招く原因

デスクワークにおける情報機器(VDT)作業は、肉体労働などに比べると座って作業していることから、未だに心身の不調につながるというイメージが深刻に持たれていないと傾向にあります。

しかし、毎日繰り返される「座りすぎ」「うつむきすぎ」「ディスプレイの見過ぎ」によって小さな不調が少しずつ蓄積し、心身の不調につながり、さらには健康を阻害するまでに至ります(図5)。

そのため、情報機器(VDT)作業による不調予防には、この3つの習慣を改めていく必要があります。

デスクワーク-VDT作業による体調不良の原因-座りすぎ-うつむきすぎ-ディスプレイの見過ぎ
図5:オフィスでのデスクワーク(VDT作業)による体調不良の原因

①座りすぎ(活動量の低下)

座りすぎと不調の関係は、座ったまま脚を動かさないことによる全身の血流悪化から始まり、習慣化することで全身の代謝や循環の機能が衰え、肥満や糖尿病などの生活習慣病や一部のがん、冠動脈疾患等を引き起こし、死亡の危険因子となると指摘されています。

Nachemson(ナッケムソン)の 「The lumbar spine an orthopaedic challenge(姿勢の変化による椎間板内圧の変化)」によると、立つ姿勢を「1」とした場合、座る姿勢は1.4倍座ったまま前傾すると1.85倍(立位前傾は1.5倍)、腰への負担は大きくなります(図6)。

このことから、座る姿勢は、立つ姿勢よりも腰に負担がかかります

そして、このような負担が続くことによって、腰痛や脊柱の変形につながり椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症等にもつながり、筋骨格系の不調の原因となります。さらには、認知機能低下や抑うつ等の原因となる可能性も指摘されています。

座って作業をし続けるという行動が心身の健康を阻害する可能性があることを意識することが必要です。

デスクワーク-VDT作業における姿勢と腰の負担の関係
Nachemson.1976「The lumbar spine an orthopaedic challenge(姿勢の変化による椎間板内圧の変化)」

職場における「腰痛」の予防・対策について詳しくは以下の記事をご覧ください。

②うつむきすぎ(重たい頭を支える)

パソコン作業と比較してスマートフォン作業では、首が曲がったうつむき姿勢になりやすいです。

成人の頭の重さは約4~6㎏あり、首が前に傾くほど頚椎にかかる負荷は増え、頭が2㎝前に出るだけで2倍4㎝前に出ると5倍とされています。そして、もっとも姿勢が悪い(首の角度が60度)だと27kgになり、8歳(小学校3年生)の児童の平均体重に相当する負荷となります(図7)。
これを何時間も何日も続けていると頭を支える筋肉への負担だけでなく、脊柱の変形を起こし、いわゆるストレートネックといわれる状態になってしまいます。

また、いわゆる肩こりや首の凝りなどの症状ががありながら無理に長時間のパソコン作業など、同じ姿勢で上肢のみの運動を長く続けることは、さらなる症状の悪化につながります。

仕事における首の角度と首にかかる負担
図7:首の角度と首にかかる負担

職場における「肩こり(頚肩腕症候群)」の予防・対策について詳しくは以下の記事をご覧ください。

③ディスプレイの見過ぎ(見つめる行為)

ディスプレイ見つめていると、目の周りの筋肉が緊張して硬くなり血流低下がおこります。

さらに、見つめる行為は、同じ姿勢でディスプレイを注視するため、まばたきの回数が減ります。この状態が続くと、交感神経が過剰に働き、顔面から首の筋肉が緊張し、脳への血流が制限されていきます。

また、交感神経が働き続けると、イライラ、疲れ、不安、睡眠不良などが生じることがあります。「見つめる」行為そのものが不調の原因となるのです。

体内時計と自律神経

ディスプレイを見る行為は、ブルーライトに目が曝されること、目や姿勢が固定されることです。

ブルーライトは体内時計の調整に関係し、体内時計は自律神経の働きに影響します。つまり、長時間のVDT機器使用は、体内時計を狂わせ、自律神経の働きを低下させるのです。

自律神経は、交感神経と副交感神経がバランスよく入れ替わることにより、人は心と身体の働きを保っています(図8)。

  • 交感神経:興奮時や戦いの時に優位
  • 副交感神経:睡眠時やリラックス時に優位
図8:体内時計と自律神経(交感神経・副交感神経)

情報機器作業(VDT作業)を快適にするための予防・対策

情報機器(VDT)作業を快適にするための「習慣つくり」「セルフケア」「情報機器の使用方法」を説明していきます。

習慣つくり

1.睡眠の質を上げる

スッキリ目覚めのために、以下の例のように眼と身体と脳のリラックスタイムをつくれるようにしましょう。

  • 真っ暗な部屋で長時間ブルーライトを浴びない
  • 就寝の1時間前にはブルーライトから目を解放する
  • ほんのり身体が温まるくらいの軽いストレッチをする

2.運動の機会をつくる

作業の合間や私生活においても運動の機会を作れるようにしましょう。

  • 早歩き程度の強度の運動を1日1時間おこなう(10分×6回程度の小分け運動でも効果あり)
  • 通勤で早歩き・階段を使うなどする
  • 「NOディスプレイ時間」に社内や近所を歩く
  • 運動を伴う趣味を見つける

3.良い姿勢をつくる

以下の例のように、うつむかない姿勢で首・肩・腰の負担を減らすようにしましょう。

➀ディスプレイが目の高さより下過ぎるとうつむき姿勢になりやすくなります(特にノート型パソコン)。ディスプレイの角度、作業台や椅子の高さ、パソコン本体の高さなどの調整で、うつむき姿勢にならない対策をしましょう。

肩こりに良い姿勢と悪い姿勢
図9:肩こりに良い姿勢と悪い姿勢

➁スマートフォン等の手に持って使用する機器の場合、文字や画像を見ようとしてディスプレイと目の距離が近くなりやすく、首を垂れ下げるようなうつむき姿勢になりやすくなります。
うつむいて近づくより、腕を挙げて近づくようにするとうつむきの角度は小さくなります。そして、腕の挙げっぱなしは疲れるため、胸の前でクッションや荷物をを抱えたり、腕組みをすると負担の軽減につながります。

図10:スマートフォン使用時における負担の軽減

セルフケア

眼の筋肉を緩める

1.「NOディスプレイ時間」を作る

VDT作業が1時間(3時間)続いたら、1~2分(10~15分)程度ディスプレイを見ない小休止時間を作りましょう。

2.目を温める

目の周りの筋肉を温めて血流を改善します。
※市販の目を温める商品、電子レンジで出来る蒸しタオル、温かい手の平で目を覆うなど

3.目のストレッチ

1時間に1回ほど、ピントを合わせる距離を変えましょう。

【ピント合わせ運動】

➀:3~5m先の遠くにピントを合わせて5秒見つめる
➁:手の平などで30㎝程の近くにピントを合わせて5秒見つめる
➂:➀と➁を5回程繰り返す

身体をほぐす

1.時々姿勢を変える

同じデスクワークでも時々姿勢を変えるようにしましょう。

  • 座ったまま脚を伸ばす(脚の血流改善、股関節・臀部の除圧)
  • 臀部や腰にクッションを入れる(股関節・臀部の除圧、骨盤位置矯正)
2.立って作業をする

固定されていないVDT機器であれば、立って作業をすることも姿勢を変えるよい方法です(30分に1回は立つことが望ましい)。

図11:デスクワーク時の立位姿勢
3.休憩時間にストレッチ

「NOディスプレイ時間」にミニマムストレッチをする。
呼吸に合わせて身体を動かすことで、筋や関節を緩め、血流を改善する。図の4つの運動は、立っておこなっても、座っておこなってもよい。

図12:NOディスプレイ時間におけるストレッチ

(参考)「OFFICE CARE」による健康支援

「OFFICE CARE」では、企業・法人向けの支援として健康関連のコンサルティングおよび従業員向け健康支援サービスを提供しております。

従業員向け健康支援サービスとして、VDT作業による健康被害防止や体調不良によるパフォーマンス低下(プレゼンティーズム)のための【出張施術サービス(マッサージ・はりきゅう・整体)】や、適切な情報機器の利用やセルフケアの【各種研修・セミナー】、【カウンセリング(メンタルヘルスケア)】をおこなっています。

ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

出張施術(マッサージ・はりきゅう・整体)

Massage&Acupuncture

  • 定期訪問サービス
  • スポット訪問サービス
  • 労働生産性損失(プレゼンティーズム・アブセンティーズム)の可視化
研修-セミナー-教育

研修・セミナー

Training&Seminar

  • 対面/オンライン
  • 体力チェック、筋力低下予防、ストレッチ・運動指導、労働災害防止
  • メンタルヘルスケア、キャリア形成支援
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情報機器の使用方法

(⼀社)⽇本⼈間⼯学会が、情報機器の正しい理解や使い方のために「在宅ワーク/在宅学習のヒント集」としてポイントを絞って紹介しています。

今までの記載内容と重複する部分もありますが、簡単に紹介していきます。

➀在宅ワーク/在宅学習で情報機器を使⽤する場合は、 「20-20-20 ルール」を実践

画⾯を⻑時間⾒続けることで、眼精疲労や姿勢拘束による筋⾁・運動器系の不快感(⾸・肩の痛みなど)のような、様々な健康上の問題を引き起こす可能性があります。そのため、「20-20-20ルール」を実践しましょう(図13)。

  • 情報機器を使⽤する際には、休憩を取るため のリマインダーとして20分ごとにアラームを設定します。
  • ウェビナーまたはオンライン講義をあなたが 主催者・講演者として⾏う場合は20分ごとに⼩休⽌を促すスライドを挿⼊するか、20分ごとに質問をなげかけるようにします。
  • 20秒間20feet(約 6m)以上離れたところを⾒る際には、座っていたのなら⽴ち姿勢に変え て⾏いましょう。20-20-20ルールに加えて、 座っている姿勢と⽴っている姿勢を交互に切り替えることも、⼀般的な健康上の問題を防ぐ効果的な⽅法です。
追加のヒント
  • 20-20-20ルールを拡張して、20分ごとに20秒間⽬を閉じて⽬を休めることも有益です。 また、意識的にまばたきを頻繁に⾏うように することで、涙の量が増えてドライアイを防ぐことができます 。
  • 多様なタスクを意図的に割り当てて、1⽇中画⾯を⾒続けないようにしましょう。 たとえば、ウェビナーを⾒ながらキーボードやタブレッ トで⽂字⼊⼒する代わりに、筆記⽤具を使⽤してメモを取るようにするなど、媒体を分けることを習慣にするのも良案です。

➁タブレットやノート PC などの情報機器を使⽤する場合は、 座った姿勢と⽴った姿勢を交互に取る

情報機器を使⽤しているときは、⽴っている姿勢と座っている姿勢を交互に⾏う⽅が、⻑時間同じ姿勢でいるよりもはるかに優れています(図14)。最近の研究によると、⻑時間座りがちな状態を⽰す⾝体不活動は⾮伝染性疾患のリスクを⾼めることが⽰されています。

ここでのポイントは、必要に応じて姿勢を変えて活動性を増やすことと、1⽇あたりの座位姿勢の総時間を減らすことです。

  • ⾼さ調節可能な(⽴位・座位姿勢の切り替えが可能な)スタンディングデスクを使うと、 多様な姿勢変化を促すことができます。
  • 「座り姿勢10分+⽴ち姿勢5分」の組み合 わせは、情報機器使⽤者の覚醒度と⽣産性を維持するのに適しています。
  • 座っているときも⽴っているときも、作業⾯の⾼さは肘の⾼さまたは少し下になるように、テーブルの⾼さを調整します。
追加のヒント

⽴ち上がって少し歩くなど、短時間で低強度な動作(アクティブレスト)を⼊れて座りっぱなしにならないようにします。「座り姿勢20分 +2分間のアクティブレスト」を繰り返して⾏うだけでも、⾷後の⾎糖値を下げる効果があります。

これは、座りっぱなしを避けることが、2型糖尿病の発症を予防または軽減する効果的な⽅法になることを⽰しています。

➂スマートフォンを持っている腕をもう⼀⽅の⼿で⽀え、 スマートフォンは持ち上げて⾸をできるだけまっすぐにする

スマートフォンを使⽤しているとき、腕の筋疲労 を軽減するために⼈は無意識的に肘の⾼さのあたりで体に近づけて操作します。これにより頭部・頸 部は前傾姿勢になりがちです。これは⾸・肩に⼤きな負担がかかります。

そのような前傾姿勢の保持を減らすためには、スマートフォンを⽚⼿で持っている腕をもう⼀⽅の⼿で⽀え、スマートフォンを持ち上げて、⾸をできるだけまっすぐにする習慣をつけることが重要です(図15)。

  • 多くの場合、モバイル端末を使⽤した閲覧や ⼊⼒の際には⾸が曲がり、端末は⽚⼿で持つために⼿⾸は内転(尺屈)し、中⽴な姿勢に はなりません。スマートフォンを⽚⼿で主に扱うと、⽚⽅の⾸・肩・上肢に負担が偏在します。スマートフォンを持っている⼿を頻繁に切り替えることでバランスをとり、負担の偏りを回避します。
  • 情報機器を⾒るときの視距離は、通常40cm以上が推奨されています。
追加のヒント
  • 最近の系統的レビュー論⽂によれば、近年、⾸の痛みに関する有病率は全世界で17.3%〜67.8%の範囲であることが⽰されています。この調査では、電話、メッセージ送信(SNSなど)、およびゲームによる⾸の屈曲は、情報機器利⽤者の筋⾻格系障害と関連していることも⽰されています。
  • ⾸の屈曲⾓度は、スマートフォンなどの情報端末を使ったメッセージ送信時の⽅が他の使⽤場⾯よりも特異的に⼤きくなり、また、座っているときは⽴っているときよりも⼤幅に屈曲⾓度が⼤きくなります。

➃タブレット・スマートフォン⽤のスタンド/ケースを使⽤し、 本や雑誌の上に置くなどして、画⾯は⽬の⾼さまたは少し下になるようにする

⼿で持って操作可能な情報機器は、サイズが⼩さく、⽚⼿で操作できるという利点があります。⼀⽅で、そのような情報機器の使⽤は、頭の前傾姿勢をまねきます。頭部の前屈⾓度が⼤きくなるほど⾸・ 肩への負担が⼤きくなり、上肢筋⾻格系障害、テキストネック(スマホ⾸)、⾮特異的頸部痛の原因になります。

そのため、⼀定時間(約15分以上)スマートフォンなどの画⾯を⾒る場合は、⼿に持たずに、タブレット・スマートフォン⽤のスタンドまたはケースを使⽤し、⾼さを⽬の⾼さまたは少し下になるように配置します。テーブルの上に本や雑誌を積み重ねて⾼さを調整しましょう(図16)。

  • 画⾯を⾒る際は体をひねったり不⾃然な姿勢 にならないように、体の正⾯に配置します。
  • 適切な視聴距離を保つことも、⽬の疲れや頭と⾸の過度な屈曲を避けるためには重要です。 画⾯を離しすぎると、前傾姿勢を誘発する可能性があります。 また、画⾯を近づけすぎると画⾯の明るさによって眼精疲労の原因につながります。適切な視距離を保つための簡単な⽅法は、腕を前⽅に伸ばしたときの⻑さと同じ位置に情報機器を置くことです。
  • 画⾯の表⽰⾓度を調整します。 画⾯は⽬の⾼さか、その少し下になるように配置します。 タブレット・スマートフォン⽤の市販のスタンドまたはケースには、傾きを簡単に調整できるものがあります(図17)。また、グレア(光源が画⾯に映り込むこと)を防ぐための対策を講じることも重要です。 画⾯に直接光が当たら ないように、作業机のレイアウトまたは光源の位置を調整します。 画⾯の位置や⾓度を調整して、画⾯グレアが⽣じないようにします。
追加のヒント
  • タブレットの使⽤は紙の使⽤と似ていますが中⽴の脊椎姿勢が減り、肩甲⾻の位置や、上部僧帽筋の活動は紙で筆記する時とは異なり ます。また、タブレットの使⽤は、デスクトップ型のPCの使⽤とも異なる筋⾻格系負担がかかることも⽰唆されています。
  • 画⾯が周囲より明るい場合は、画⾯の明るさを周辺の環境光の明るさと同程度になるように調整します。最新のタブレット・スマート フォンには照度センサーが搭載されており、調整機能がオンになっていると、画⾯の明るさは⾃動的に調整されます。情報機器は適切かつ⼗分な明るさが保たれている部屋で⽤いるようにしましょう。
図17:市販のスタンドで画面の高さを調整する

➄情報機器でコンテンツを閲覧・視聴するときには 横向きにして使⽤することを基本にする

⽂字の⼊⼒、またはコンテンツの視聴のために⼀ 時的にタブレット・スマートフォンを使⽤する場合には両⼿で持つようにしましょう(図18)。特に⼤きく て重いタブレットは両⼿で持つ場合に⽐べて、⽚⼿では使いにくく、また⽣体⼒学的にみても負荷が⼤きくなることが分かっています。

また、タブレット・スマートフォンを⽚⼿で縦向きに使⽤すると、⼀般的に⽂字サイズおよび表⽰コンテンツは⼩さくなり、視認性が低下します。

  • 画⾯を横向きにして使⽤すると、(⼀覧性は低下しますが)多くの場合⽂字サイズを⼤きくできます。
  • タブレットを横向きモードにして机の上に置くと、画⾯上のソフト・キーボードは拡⼤さ れます。ソフト・キーボードを使⽤して⽂字 を⼀時的に⼊⼒する必要がある場合は、キーボードはできるだけ⼤きくします。キーピッチ(キー間の中⼼間距離)は、タイピング速度に影響を与える要因の1つであり、⼊⼒エラーや使いやすさ、製品使⽤に対する不満⾜感に影響をもたらします。
  • タブレットを机の上に平⾯上に置けば、スタ イラスや Bluetooth ペンを使⽤しやすくなり ますが、⾸の前屈が⼤きくなっていることに 注意してください。
追加のヒント
  • たとえ軽量のタブレットであっても、拘束姿勢のまま⻑時間、腕の⽀えなしで保持していると、⾸、⼿⾸、腕に筋⾻格系の問題を引き起こす可能性があります。
  • ⼀時的にタブレットを持つ必要がある場合に備え、両⼿で持ちやすいタブレットケースを選んで使⽤するとよいです。
  • 画⾯を⼀定時間みる場合は、スタンド/ケースを使ってタ ブレットを傾けたり、⾼さを⾼くしたり、ノ ートパソコン⽤のスタンドを使⽤するように ⼼がけてください。

➅ストップ・ドロップ・フロップ! ⼩休⽌を取る習慣として、このシンプルな⽅法を実践

「Stop、Drop、Roll(⽌まって、倒れて、転がって)」 は、⾐服に⽕が付いた場合に実施すべき対処法で、⼦供、救急隊員、労働者に対する教育で⽤いられる⽕災安全スローガンです。

このスローガンを模した「Stop-Drop-Flop(⼿を⽌めて、置いて、ダラダラして)」は、頻繁にSNS をなどの⽂字⼊⼒を⾏う時、あなたの健康を維持するのに役⽴ちます。Stop-Drop-Flopを習慣にし、⼩休⽌を適宜はさむ⼿がかりを作ってみてください。

  • 「Stop-Drop-Flop」を実践し、⼩休⽌をとるようにします。たとえば、メールや⽂字⼊⼒の⼀区切りに、いったん⼿を⽌め端末をテー ブルに置き、肩をリラックスさせて両⼿を横に振るなどストレッチを⾏ってください。
  • 図19のイラストに⽰すように、ストレッチとして「ネック・リトラクション(⾸の後退運動)」を⾏うこともお勧めします。ネック・リトラクションは、頸部の痛みや機能障害のある患者を治療するために⼀般的に⾏われている理学療法の⼿法のひとつです。
追加のヒント
  • 腱鞘炎のような反復性疲労障害(RSI)などの 上肢筋⾻格系障害を防⽌するための⼀般的な アドバイスは、頻繁な⼩休⽌をはさみながら、 ちょっとしたストレッチ・エクササイズを⾏うことです。
  • 頭の前屈⾓度が⼤きくなるほど、⾸・肩にか かる負担は⼤きくなります。平均的な⼈の頭の重さは約5kgであり、45°の頭部前屈⾓度でスマートフォンを⾒ている場合には、⾸・肩に最⼤22kgの負荷がかかっています。
  • 2015年の「世界の疾病負荷研究」では、腰痛や⾸の痛みなどの筋⾻格系障害が、ほとんどの国で障害調整寿命(DALY)に与える原因の第⼀位となっていることが⽰されています。

➆タブレット・スマートフォンで⻑時間⽂字⼊⼒をするときは、 外付けの⼈間⼯学キーボードを使⽤する

タブレットやスマートフォンを使⽤して⻑時間⽂字を⼊⼒する必要がある場合は、画⾯上のソフト・キーボードの代わりに外付けの⼈間⼯学キーボードを使⽤します(図20)。ソフト・キーボードを使⽤して⽂字を⼊⼒すると、特に縦向きの場合、キーピッチが 狭いため、多くのタイプミスが発⽣します。さらに、縦向きのタブレット・スマートフォンのソフト・キーボードで⻑時間⼊⼒すると、微細な⼊⼒操作により拘束姿勢が⽣じます。

  • ⼤量の⽂字⼊⼒の際には、外付けのワイヤレス・Bluetoothキーボードの使⽤をお勧めし ます。
  • キーピッチ(キー間の中⼼間距離)は、タイピング速度や⼊⼒エラーに影響を与える要因の1つであり、使いやすさに対する不満につながります。⼈間⼯学的な標準のキーピッチ(19mm)を持つキーボードを選びましょう。
  • キーボードと画⾯を分離すると、多くの利点があります。画⾯までの適切な視距離はキーボードの適切な操作に必要となる配置距離とは異なるため、それらは独⽴して配置する必要があります。
  • キーボードを頻繁に使⽤する場合は、肘を伸ばさない距離で使⽤できるように、キーボードは体に⼗分近づけて使⽤します。キーボー ドを配置する推奨作業域は、体の正⾯の半径40cm以内です。
追加のヒント
  • ワイヤレスキーボードは、タブレット・スマートフォンにはほとんど場合Bluetooth通信を備えてあるので、多くの機種と互換性があります。インターネットで「Bluetooth キーボード」または「ワイヤレスキーボードタブ レット」という⽤語で検索してみてください。
  • ノートPCのようにキーピッチが⼩さい場合、特に尺側偏位(⼿⾸を⼩指側に曲げる)が⼤きくなり、姿勢が拘束されやすくなりますので、⻑時間の使⽤は避けましょう。

最後に

最近では、職場以外での家庭におけるタブレット・スマートフォン利用も浸透してきており、1日中画面をみる生活となっています。

また、これまで「情報機器作業における労働衛生管理」の主な対象は、事務所における情報機器作業でしたが、新型コロナウィルス蔓延下におけるテレワークなどに従事する労働者の増加から、事業所以外での作業に対しても同様の対応が求められるようになっています。

情報機器作業者の心身の負担を軽減するためには、労働者個人だけでなく、職場(作業)環境管理の視点から事業者が、作業環境をできる限り情報機器作業に適した状況に整備するとともに、作業が過度に長時間にわたり行われることのないように適正な作業管理をおこなうことが重要です。


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