「令和6年度 エイジフレンドリー補助金」で労働災害の予防と健康増進の取り組みを!

エイジフレンドリー補助金

近年、60歳以上の高年齢労働者は増え続け、労働災害による死傷者数においても60歳以上が約30%を占めています。身体機能が低下している高年齢者は労働災害の発生率が高くなり、休業の長期化を招きやすくなっているのが現状です。

高年齢労働者の労働災害防止対策、全労働者の転倒や腰痛を防止するための専門家による運動指導等、全労働者の健康保持増進のために、厚生労働省は令和6年5月7日より、高年齢労働者の就業環境を整えるための「令和6年度エイジフレンドリー補助金」の申請受付を開始しました(10月31日まで)。

エイジフレンドリー補助金を是非ご活用ください。

令和6年度から、高年齢労働者を対象としたコース以外に、全労働者を対象としたコースも新設されました。職場の労働環境を改善し、人材確保をより安定させたい中小企業事業者は、ぜひこの記事を参考にしてください。

尚、エイジフレンドリーとは「高年齢者の特性を考慮した」を意味する言葉で、WHOや欧米の労働安全衛生機関で使用されています。

⾼齢者を含む労働者が安⼼して安全に働くことができるよう、中小企業事業者による高年齢労働者の労働災害防止対策、労働者の転倒や腰痛を予防するための専門家による運動指導等、コラボヘルス等の労働者の健康保持増進のための取組に対して補助を行うものです(厚生労働省)。

尚、(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会が、補助事業の実施事業者(補助事業者)となり、中小企業事業者からの申請を受けて審査等を行い、補助金の交付決定と支払を実施します。

  • 補助金申請期間 令和6年5月7日~令和6年10月31日

「エイジフレンドリー補助金」は、中小企業の高年齢労働者の労働災害防止対策や、コラボヘルスなど、労働者の健康保持増進の取り組みを支援するものです。

なお本補助金では、下記の3つのコースが設けられています(表1)。

  1. 高年齢労働者の労働災害防止コース60歳以上の高年齢労働者のみ対象)
    高年齢労働者が安全に働けるよう、高年齢労働者にとって危険な場所や負担の大きい作業を解消する取り組み等を補助
  2. 転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース全ての労働者が対象)
    労働者の身体機能低下による「転倒」や「腰痛」の行動災害を防止するため、身体機能維持改善のための専門家等による運動プログラムに基づいた身体機能のチェック及び専門家等による運動指導等に要する費用を補助
  3. コラボヘルスコース全ての労働者が対象)
    コラボヘルス等の労働者の健康保持増進のための取り組みを補助
     

コラボヘルスとは、医療保険者と事業者が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、労働者の健康づくり等を効果的・効率的に実行することです。

表1:エイジフレンドリー補助金の概要
➀ 高年齢労働者の労働災害防止対策コース➁ 転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース➂ コラボヘルスコース
対象事業者(1)労災保険に加入している
(2)中小企業事業者(※表2参照)
(3)1年以上事業を実施している
 +役員、派遣労働者を除く、以下の労働者を雇用していること
• 高年齢労働者(60歳以上)を常時1名以上雇用している
• 対象の高年齢労働者が補助対象にかかる業務に就いている
• 労働者を常時1名以上雇用している(年齢制限なし)
補助対象1年以上事業を実施している事業場において、高年齢労働者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入その他の労働災害防止対策に要する経費(機器の購入・工事の施工等)労働者の転倒防止や腰痛予防のため、専門家等による運動プログラムに基づいた身体機能のチェック及び専門家等による運動指導等に要する経費事業所カルテや健康スコアリングレポートを活用したコラボヘルス等、労働者の健康保持増進のための取組に要する経費
補助率1/23/4
上限額100万円(消費税を除く)         30万円(消費税を除く)
注意事項※複数コース併せての上限額は100万円です。
※複数コース併せた申請の場合は、、希望コースをまとめて申請してください。
※この補助金は「事業場規模」「高年齢労働者の雇用状況」「対策・取組の内容」等を審査の上、交付を決定します。
※全ての申請者に補助金が交付されるものではありません。
表2:(※1)中小企業事業者の範囲
業種常時使用する労働者数資本金又は出資の総額
小売業小売業、飲食店、持ち帰り配達飲食サービス業50人以下5,000万円以下
サービス業医療・福祉、宿泊業、娯楽業、教育・学習支援業、情報サービス業、物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業など100人以下5,000万円以下
卸売業卸売業100人以下1億円以下
その他の業種製造業、建設業、運輸業、農業、林業、漁業、金融業、保険業など300人以下3億円以下
※ 常時使用する労働者数、または資本金等のいずれか一方の条件を満たせば中小企業事業者となります。
※ 医療・福祉法人等で資本金・出資がない場合には、労働者数のみで判断することとなります。
※常時使用する労働者数は、企業全体の労働者数から、①日日雇い入れられる者、②二箇月以内の期間を定めて使用される者、③季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者、④試の使用期間中の者を除いて数えます。

「エイジフレンドリー補助金」3種類の申請コース

令和6年度エイジフレンドリー補助金の申請コース

エイジフレンドリー補助金は、60歳以上の高齢従業員を対象とした「➀ 高年齢労働者の労働災害防止対策コース」、全従業員が対象となる「➁ 転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース」、「➂ コラボヘルスコース」の3種類の申請コースがあります。

それぞれについて説明していきます。

➀ 高年齢労働者の労働災害防止対策コース

対象:高年齢労働者(60歳以上)

エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)

高年齢労働者(60歳以上)の労働災害の防止のための取組に要する費用を補助対象とします(図9)。

 高年齢労働者(60歳以上)の労働災害の防止のための取組に要する費用を補助対象とします。

  • 転倒・墜落災害防止対策
  • 重量物取扱いや介護作業における労働災害防止対策(腰痛予防対策)             
  • 暑熱な環境による労働災害防止対策(熱中症防止対策)
  • その他の高年齢労働者の労働災害防止対策(交通災害防止対策)
令和6年度エイジフレンドリー補助金(高年齢労働者の労働災害防止対策コース)
図9:厚生労働省「令和6年度エイジフレンドリー補助金(高年齢労働者の労働災害防止コース)」

対象となる事業者

  1. 労災保険加入している
  2. 中小企業事業者
  3. 高年齢労働者(60歳以上)を常時1名以上雇用し、対象の高年齢労働者が対策を実施する業務に就いている

補助対象

60歳以上の高年齢労働者が安全に働けるよう、身体機能の低下を補う設備・装置の導入や危険な場所の解消・その他の労働災害防止対策にかかる経費

補助率・上限額

  • 補助率:1/2
  • 上限額:100万円(消費税を除きます)

対象経費

具体的には次のような1.~4.の対策が対象となります。

1.転倒・墜落災害防止対策

  • 作業床や通路のつまずき防止対策(作業床や通路の段差解消)(※法令違反状態の解消を図るものではないこと)
  • 作業床や通路の滑り防止対策(水場等への防滑性能の高い床材・グレーチング等の導入、凍結防止装置の導入)
  • 転倒時のけがのリスクを低減する設備・装備の導入
  • 階段への手すりの設置(※法令違反状態の解消を図るものではないこと)
  • 高所作業台の導入(自走式は含まず。床面から2m未満の物)

2.重量物取扱いや介護作業における労働災害防止対策

  • 不自然な作業姿勢を解消するための作業台等の設置
  • 重量物搬送機器・リフト(乗用タイプは含まず)
  • 重筋作業を補助するパワーアシストスーツの導入
  • 介護における移乗介助の際の身体的負担を軽減する機器の導入
  • 介護における入浴介助の際の身体的負担を軽減する機器の導入
  • 介護職員の身体の負担軽減のための介護技術(ノーリフトケア)の修得のための教育の実施

3.暑熱な環境による労働災害防止対策

  • 熱中症リスクの高い暑熱作業のある事業場における休憩施設の整備、送風機の設置
  • 体温を下げるための機能のある服の導入
  • 熱中症の初期症状等の体調の急変を把握できる小型携帯機器(ウェアラブルデバイス)による健康管理システムの導入(初期導入費用のみ、パソコンの購入は対象外)

4.その他の高年齢労働者の労働災害防止対策

  • 業務用車両への踏み間違い防止装置の導入

※労働者個人ごとに費用が生じる対策(高所作業台の導入、重量物搬送機器・リフト、パワーアシストスーツ、体温を下げるための機能のある服等)については、対策に関わる人数分に限り補助対象とします。

対象経費についてもっと詳しく!

対象経費についてよくある質問について項目ごとに以下に纏めました。

詳細を知りたい項目のタブをクリックしてください。

転倒・墜落災害防止対策
  • 敷地内(屋外)に安全な通路を整備するための工事は補助対象外
  • 老朽化により通路に生じた穴や凹凸の解消のための工事は補助対象外
  • 床に配線がむき出しになっているため、床を嵩上げして配線を床下に収納する工事は、補助対象外
  • 滑り防止対策のための凍結防止装置は、労働者(自社の社員)が利用する通路(事業場敷地内に限る)における積雪や気象による 凍結を防止するための電熱マット等が対象
    ※通路以外の場所や、主として労働者ではない顧客や施設利用者が利用する通路や凍結防止装置は対象外
  • 転倒時の怪我のリスクを低減する設備・装備とは、労働者が万が一転倒してしまった場合にも、骨折等の怪我をしにくくする設備や装備が対象
    ※製品カタログ等に「転倒時のケガのリスクを低減する」旨が明記されている必要があります
  • 「高所作業台」は、2メートル未満の高い場所における作業を行うための、囲いや手すりが付属した昇降装置 を具備する作業台が対象(2メートル以上の高さにおける高所作業を行うための高所作業車等は補助対象外
    ※トラックで高所作業台を使用する場合も補助対象外
  • 屋外階段に滑り止めを施工したい場合、既に施工されている滑り止めが老朽や劣化しているなどは対象外(現時点で滑り止めが施工されていない場合が対象)
    ※申請時に滑り止めの素材が確認できるカタログ等の写しが必要

重量物取扱いにおける労働災害防止対策
  • 「重量物搬送機器・リフト」として補助対象になるもの、ならないものは、高年齢労働者の身体機能の低下を補う機器が補助対象となります。労働者がその機器がないと業務ができないようなものは、補助対象となりません。
     〇 補助対象となるもの:ハンドリフト、チェーンブロック(ホイスト含む)
     × 補助対象とならないもの:クレーン(労働安全衛生法に規定するもので、つり上げ荷重 0.5トン以上のクレーン)、乗用フォークリフト、テールゲートリフター、自動車整備用リフト
介護作業における労働災害防止対策
  • 介護施設の中に設けられた居室の出入口に大きな段差があるため、床を下げてフラットにする工事は補助対象外(但し、労働者も出入りする部屋の段差解消であれば、補助対象)
  • 介護施設等において、電動ベッドは対象外(介助者の腰痛防止効果は認められるものの、被介助者側の負担軽減、介護サービス向上が主目的と考えられるため)
    ※その他、電動昇降機能、電動背起こし機能つきベッド、褥瘡防止ベッド、マットやベッド 付属の見守り装置、体重測定装置等
  • 介護施設等において、車いすは原則として補助対象外(スライディングボードを使用する際に必要となる片ひじが外せるなど、高年齢労働者の身体的負担軽減に効果がある機能を有する車いすについては、補助対象となります。ただし、自走式の車いすは対象外
  • 介護施設における浴室での入浴介助作業においては、入浴用ストレッチャー、リフトやこれらに対応した浴槽、自動浴槽等が補助対象
  • 介護職員の身体の負担軽減のための介護技術(ノーリフトケア)の修得のための教育は補助対象
    外部講師を活用した(オンライン可)研修で、研修参加費用、講師派遣費用及びテキスト代が対象となりますが、受講のための旅費は対象となりません。教育における講師の要件に定めはありませんが、メーカー等による単なる機器の使用法のみの教育は対象ではなく、ノーリフトによる職員の労働衛生管理が研修のカリキュラムに含まれていることが必要です。
熱中症予防対策等

  • 補助金の対象となる熱中症のリスクの高い暑熱作業のある事業場とは、労働安全衛生規則第587条に規定する作業環境測定を行うべき屋内作業場又は屋外の作業場がある事業場が対象
    ※申請時には直近の暑熱の屋内作業場にかかる作業環境測定結果が必要
  • 補助金の対象となる休憩設備とは、暑熱な作業場の近隣にある壁などで仕切られた独立のスペースで、足を伸ばして横になれる広さが必要(恒常的に使える設備とし、移動や取り外しが容易なパーティションで仕切られたスペースは対象外
  • 工場内の熱中症のリスクの高い暑熱な作業場において、休憩設備を整備する場合、休憩設備のエアコンの設置も含めて、補助対象。また、既に休憩設備が整備されている場合は、休憩設備のエアコンの設置のみでも補助対象
  • エアコンの更新は、熱中症のリスクの高い暑熱な作業場において、現に整備されている休憩設備のエアコンに限って対象
  • 熱中症のリスクが高い暑熱な作業場における休憩設備の整備が目的であり、作業場や事務室に設置するエアコンは対象外(但し、熱中症のリスクが高い暑熱な作業場への送風機(工場扇)の設置は対象)
  • ネッククーラーや保冷剤は対象外
  • 屋外作業や室温が28度を超える屋内作業を行う作業場において、電動ファン付き作業服は、体温を下げる機能がある場合は補助対象となり、高年 齢労働者の人数分が限度
    ※同様にクールベスト等も体温を下げる機能がある場合は対象(水場での使用が推奨されないもの、アンダーウェアは対象外
  • 熱中症対策のため、事業所の屋根に遮熱性の高い塗料を塗布する場合は対象外
その他
  • 営業用車両への踏み間違い防止装置、自動ブレーキは自社名義車両への後付けが対象。ただし、新車購入時のオプション購入による取付、リース車は対象外
  • LED 照明への変更は、対象外(節電による経費削減目的と高年齢労働者のための設備改善目的との峻別が困難なため)
  • 新型コロナ感染防止対策に係る費用は対象外
  • 和式トイレを洋式トイレへ変更する費用は対象外
  • 一人の労働者が、複数の作業場所で作業を行っており、作業場所ごとに機器等を購入・導入する場合は、労働者ごとに費用が生じる対策(高所作業台の導入、重量物搬送機器・リフト、パワーアシストスーツ、体温を下げるための機能のある服等)については、対策に関わる人数分に限り補助対象
  • シャッターガードや安全装具は対象外
  • 工具、生産機器、事務用機器、生産ライン(コンベア含む)は対象外

令和6年度において対象外となった経費

  • 危険個所への安全標識や警告灯等の設置
  • 防滑防止の靴
  • トラック荷台等の昇降設備の導入
  • 事務室や作業場へのエアコン(スポットクーラー、工場扇等を含む)の設置
  • 黒球付熱中症計
  • 新型コロナウイルス感染症を防止するための空気清浄機

【参考】 「高年齢労働者の活躍」が求められている背景

高齢化の進展に伴い、日本における社会・企業の人口構成が大きく変化しています。

以前までの人事制度が構造的な限界を迎えつつあるなか、働き方の多様化や、副業・兼業の解禁などの制度の変化もあり、新たな人事の構造を構築することが重要となっています。

新たな人材活用においては、今後さらに大きな層となる高年齢者層(シニア層)の活用が考えられています。さらに生涯現役社会の推進と合わさり、高齢者雇用に取り組む企業が増加すると考えられます。

企業における高齢者雇用のメリットには、シニア人材の豊富な知識・経験を活用できる、チームに多様性をもたらすことができる、人材確保のひとつの手段になる、といったことが挙げられます。

また、こうした高齢者人材を含む労働者が安心して働くことができる環境を整備することも重要です。

次からは、これらをデータで紹介していきます。

人口の推移、人口構造の変化

厚生労働省「我が国の人口について」によると、日本の人口は近年減少局面を迎えており、2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準になると推計されています(図1)。

また、団塊の世代の方々が全て75歳となる2025年には、75歳以上の人口が全人口の約18%となり、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となると推計されています(図2)。

諸外国と比較しても、日本における少子高齢化の動きは継続しており、今後も、人口の推移や人口構造の変化を注視していく必要があります。

健康寿命と平均寿命の差

令和5年版高齢者白書」によると、日本は平均寿命は世界一ですが、平均寿命と健康寿命の差(不健康寿命)は約10年となっています(図3)。
そのため、健康寿命を延伸させ、平均寿命との差を如何に小さくするかが重要となっています。

尚、健康寿命とは、健康上の問題で日常生活に制限のない期間としています。

高年齢者の就労と被災状況

雇用者全体に占める60歳以上の高年齢者の占める割合

総務省「労働力調査」によると、令和4年の雇用者全体に占める60歳以上の高年齢者の占める割合は18.4%となっています(図4)。

特に商業や保健衛生業をはじめとする第三次産業で増加しています。

年齢別死傷災害発生状況(休業4日以上)

厚生労働省「労働者死傷病報告」によると、令和4年の労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の高年齢者の占める割合は28.7%となっています(図5)。

年齢別・男女別の労働災害発生率

厚生労働省「労働者死傷病報告(令和4年)」および総務省「労働力調査(令和4年)」によると、60歳以上の男女別の労働災害発生率(千人率)を30代と比較すると、男性は約2倍、女性は約4倍となっています(図6)。

災害の発生率(千人率)では、若年層と高年齢労働者で高くなる傾向がみられます。中でも、転倒災害、墜落・転落災害の発生率が若年層に比べ高く、女性で顕著です。

年齢別の休業見込み期間の長さ

厚生労働省「労働者死傷病報告(令和4年)」によると、休業見込み期間は、年齢が上がるにしたがって長期間となっています(図7)。

高年齢労働者と企業側の意識

65歳を過ぎても勤めるために必要なこと

65 歳を過ぎても採用されるために必要なことは「健康・体力」が 66.8%と最も多い

労働政策研究・研修機構(JILPT)の「60代の雇用・生活調査 2015年7月」によると、65歳を過ぎても勤めるためには、「健康・体力」が必要であると考える高年齢者が66.8%に上った。次いで「仕事の専門知識・技能があること」と考える高年齢者は47.2%に上った(図8)。

図8:「60代の雇用・生活調査 2015年7月」労働政策研究・研修機構(JILPT)
高齢期を迎えた社員の体力等の問題に対する企業の配慮

高年齢労働者に対して、積極的に配慮している企業は31.6%と少ない

労働政策研究・研修機構(JILPT)の「60代の雇用・生活調査2020年3月」によると、雇用者に対して、高齢期を迎えた社員の体力等の問題について、会社側がどの程度配慮しているかを尋ねたところ、以下の順で多くなっています。

  1. 仕事の内容に関する個人的相談の場はあるが、体力や視力などの問題は個人的な問題として、特に配慮はしてもらえない(37.6%)
  2. 会社とは仕事の内容について個人的に相談・面接する場が定期的にあり、その際、作業上の問題なども相談できるので配慮してもらっている(31.6%)
  3. 仕事の内容に関する個人的相談の場は特にないが、契約の年度更新などの際に申し入れれば、職場で用いる文字の大きさや補助器具の購入、作業の速度などについては、見直して(または検討して)くれている (12.6%)
  4. 会社側は何も配慮(対応)してくれないので、必要な作業機器や什器などは自分で揃えている(6.9%)

エイジフレンドリーな職場づくりが必要

今までみてきたように、働く高年齢者が増加(60歳以上の雇用者数は過去10年間で1.5倍)しています。

そして、高年齢者は身体機能が低下すること等により、若年層に比べ労働災害の発生率が高く休業も長期化しやすいことが分かっています。

そのため、体力に自信がない人や仕事に慣れていない人を含めすべての働く人の労働災害防止を図るためにも、職場環境改善の取組が重要です。

その推進においては、厚生労働省から「エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)」、中央労働災害防止協会から「エイジアクション100」がそれぞれ公表され、各事業者で活用することが期待されています。

➁ 転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース

対象:全ての労働者

令和6年度エイジフレンドリー補助金(転倒防止や腰痛予防のための
スポーツ・運動指導コース)

対象となる事業者

  1. 労災保険加入している
  2. 中小企業事業者
  3. 労働者を常時1名以上雇用している

※高年齢者労働者が事業場に所属していない場合も補助の対象です。

補助対象

労働者の転倒防止や腰痛予防のため、専門家等による運動プログラムに基づいた身体機能のチェック及び専門家等による運動指導等に要する経費

補助率・上限額

  • 補助率:1/2
  • 上限額:100万円(消費税を除きます)

対象経費

労働者の身体機能低下による「転倒」や「腰痛」の行動災害を防止するため、身体機能維持改善のための専門家等による運動プログラムに基づいた身体機能のチェック及び専門家等による運動指導等に要する費用を補助対象とします。

・専門家とは・・・医師、理学療法士、健康運動指導士、労働安全・衛生コンサルタント、アスレティックトレーナー等

★転倒防止、腰痛予防の運動指導等に限ります(オンライン開催等も含む)★物品の購入はできません★転倒防止、腰痛予防以外の運動指導は、当コースでは補助対象外です(メタボリックシンドローム対策等の運動指導はコラボヘルスコースの活用をご検討ください)

対象経費についてもっと詳しく!

対象経費についてよくある質問について項目ごとに以下に纏めました。

令和6年度から新設されたコースのため、詳細についてご確認ください。

今回新設された、運動指導の対象はどのようなものでしょうか。

全ての労働者を対象とし「転倒防止」「腰痛予防」を目的としています。 転倒防止、腰痛予防に知見がある専門家等による運動指導プログラムに基づいた身体機能維持改善のための身体機能のチェック及び専門家等の運動指導等に要した費用が補助対象となります。

また、専門家等の実技指導(指導概要を実施計画書に記載してください。)があるものが補助対象となり、転倒防止、腰痛予防以外の運動指導はこのコースの対象外となります。
また、このコースでは運動器具など物品の購入はできませんのでご注意ください。

専門家等はどんな資格や職種が該当しますか。

次の資格や職種が該当します。

・医師 ・理学療法士 ・作業療法士 ・健康運動指導士 ・転倒予防指導士(転倒予防の運動指導等に限る) ・柔道整復師 ・アスレティックトレーナー ・労働安全・衛生コンサルタント 等

転倒防止や腰痛予防の運動指導プログラムとは、どのようなものですか。

「① 専門家(専門家の監修も可)による労働者の身体機能のチェック」及び「② 専門家による実技の運動指導(オンライン開催可)」です。 注)①または②の片方の取組しかない運動指導プログラムは補助対象となりません。

労働者にジムの回数券や割引券を配布し、個人の裁量で運動を実施することや事業場にトレーニングマシーン等を設置することは補助対象となりますか。

福利厚生とみられることから、補助対象となりません。

➂ コラボヘルスコース

対象:全ての労働者

令和6年度エイジフレンドリー補助金(コラボヘルスコース)

コラボヘルスとは、健康保険組合等の医療保険者と事業主が、それぞれの役割の責任を果たしながら連携し、従業員の健康づくりを推進する取り組みのことです(図10)。

事業者と保険者が積極的に連携して健康増進に向けて取り組むことで、より効果の高い健康づくりを行うことができ、さらに労働災害を防止し、生産性向上を実現できます。

令和6年度エイジフレンドリー補助金(コラボヘルスコース)
図10:厚生労働省「令和6年度エイジフレンドリー補助金(コラボヘルスコース)」

対象となる事業者

  1. 労災保険加入している
  2. 中小企業事業者
  3. 労働者を常時1名以上雇用している

※高年齢者労働者が事業場に所属していない場合も補助の対象です。

補助対象

事業所カルテや健康スコアリングレポートを活用したコラボヘルス等、労働者の健康保持増進のための取組に要する経費

補助率・上限額

  • 補助率:3/4
  • 上限額:30万円(消費税を除きます)

対象経費

具体的には、次のような取組が対象となります。尚、物品の購入はできません。

  1. 健康教育、研修等
    健康診断結果等を踏まえた禁煙指導、メンタルヘルス対策等の健康教育、研修等(オンライン開催、eラーニング等も含む)
    ※産業医、保健師、精神保健福祉士、公認心理師、労働衛生コンサルタント等によるもの
  2. システムの導入
    健康診断結果等を電磁的に保存及び管理を行い、事業所カルテ・健康スコアリングレポートの活用等によりコラボヘルスを推進するためのシステムの導入
    ※初期導入費用のみパソコンの購入は対象外
  3. 栄養・保健指導
    栄養指導、保健指導等の労働者への健康保持増進措置
    ※健康診断、歯科健康診断、身体機能のチェックの費用は除く

(参考)
・健康診断実施費用は対象外
・健康診断等の電磁的保存及び管理を機能として有する健康管理システムについて、その導入のための初期費用が対象(、パソコンやタブレット等の電子機器の購入、レンタル・リース費用は対象外)
・一度コラボコースの補助を受けられた場合、コラボコースの申請はできない

もっと詳しく!

よくある質問について項目ごとに以下に纏めました。

詳細についてご確認ください。

コラボヘルスコースに申請する上で注意点はありますか。

コラボヘルスコースでは、申請時において、事業者が労働安全衛生法に基づき実施した健康診断(事業主健診)の結果を保険者に提供している必要があります。また、このコースでは健康器具など物品の購入はできませんのでご注意ください。

保険者へ事業主健診結果のデータを提供していることが確認できる書類は必要ですか。

必要です。保険者が発行する事業所カルテ・健康スコアリングレポート、受領書、健診結果を保険者に提供することについての健診機関への同意書・契約書、その他保険者へ事業主健診結果を提供していることを確認できる書類をご用意ください。

※保険者が事業所カルテ等を発行していない場合その他提出できない場合はその理由を「様式1(別紙)⑨」の「その他、備考欄」に記載

「その他保険者へ事業主健診結果を提供していることを確認できる書類」とはどのようなものがありますか。

具体的には次のような書類になります。

① 全国健康保険協会(通称:協会けんぽ)や健康保険組合が実施する「生活習慣病予防健診」を受診している場合 ・保険者が事業主に発行している「生活習慣病予防健診対象者一覧」の写し ・当該健診を受診していることが確認できる書類(請求書の写しまたは健診結果の写し)

② 健診機関の問診票(健診結果を保険者に提出する旨の同意欄が記載されているもの)の写しと当該健診の費用の請求書の写し

保険者へ事業主健診結果を提供するのに要した費用は、補助の対象経費になりますか。

対象になります。ただし、本補助金の交付決定後に保険者へ事業主健診結果を提供するのに要した経費に限られます。

※自社の人件費等は含まれない

「健康診断結果等を踏まえた産業医、保健師、精神保健福祉士、公認心理師、労働衛生コンサルタント等による禁煙指導、メンタルヘルス対策、ハラスメント対策等の健康教育等(オンライン開催、eラーニングなども含む)」及び「栄養・保健指導の実施などの労働者への健康保持増進措置」について、どのように取り組めばよいですか。

まず、保険者が提供する全体平均や業態平均とデータを比較することによって自社の労働者の健康状態等を把握するための資料(一例として、事業所カルテや健康スコアリングレポート※があります。)を活用し、自社の健康課題を把握してください。もし、保険者がそうした資料を提供していない場合は、自社の健康課題について保険者からアドバイスを受ける等により、自社の健康課題を把握してください。その上で、自社において必要と考える事業を計画してください。

健診結果からメタボの従業員が多いので、運動指導を行いたいのですが。

メタボ対策としての運動指導であればコラボコースになりますが、転倒防止や腰痛防止としての運動指導はスポーツ・運動指導コースになりますので、社内や講師と検討のうえ申請してください。

補助金の申請から補助金交付までの流れ

令和6年度エイジフレンドリー補助金の申請から交付までの流れ
令和6年度エイジフレンドリー補助金の申請から交付までの流れ「(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会」

申請期間

  • 令和6年5月7日~令和6年10月31日

交付決定額が予算額に達した場合、申請期間中であっても受付を締め切ることがあるので、注意が必要です。

申請書類提出先

〒105-0014 東京都港区芝1-4-10 トイヤビル5階

エイジフレンドリー補助金事務センター「申請担当」

最後に

現在、少子・高齢化の進展に伴って、企業・労働者において生涯現役社会の実現が求められており、高年齢労働者のこれまでに蓄積した知識や経験等を活かし、積極的に活躍できる機会を提供して、貴重な戦力として活用できるようにすることが必要な時代になっています。

このような中で、高年齢労働者の労働災害は、全体の約半数を占め、若年者に比べて発生率が高くなっているなど、高年齢労働者の労働災害の防止に向けての取組が喫緊の課題となっています。

具体的な対策の実施に当たっては、高年齢労働者の労働災害の発生には、加齢に伴う身体・精神機能の低下が影響を与えていることから、それによる労働災害発生リスクの低減の視点を踏まえて対策を進めていくことがポイントとなります。

また、高年齢労働者を含めた全従業員が、いきいきと働くことができ、その能力を最大限に発揮できるようにするためには、働きやすい職場環境の整備や働き方の見直しを行うという視点も重要です。

高年齢労働者の労働災害防止、高年齢労働者を含めた全従業員の健康保持増進のために、エイジフレンドリー補助金を是非ご活用ください。

また、弊社では、認定支援機関として公的支援制度を活用したコンサルティングや補助金・助成金申請サポートもおこなっているため、ご不明な点等ございましたらお気軽にお問い合わせください。

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企業法人向け健康支援サポート-健康経営-福利厚生-生産性の向上
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